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アカデミーのお知ら

💖 フラメンコの真実(ラ・ベルダ)

むかしむかし──

あるひとりの先生がいました。

長い年月を経て、その先生は気づいたのです。

教えるということは、足を動かしたり、

コンパスを刻むことではないと。


それはもっと深いもの。

人の心を大切に育て、

いつかその人自身の光で踊れるように導くことでした。


十月の夜、

スタジオにはいつもと違うざわめきがありました。

それはタコンの音でも、カホンの響きでもなく、

震える息づかいと、

緊張が瞳の奥で光に変わる音でした。


照明がゆっくりと落ち、

最初に語ったのは「静けさ」でした。


そして一人、また一人と、

生徒たちが舞台へと歩み出ました。

誰も飾らず、誰も競わず、

ただ心のままに踊っていました。


その瞬間、先生は知ったのです。

フラメンコは――

喜びの涙を流すこともできるのだと。


観客の拍手は聞こえませんでした。

先生の耳には、ただ笑顔だけが響いていました。

作りものではない、まっすぐで、

練習では生まれない笑顔。


それぞれの笑顔が、

言葉にならない「ありがとう」でした

。一歩一歩が、

静かな告白のようでした。


最後のタコンが木の床に消えたとき、

先生の胸には甘い寂しさが残りました。

海が引いたあと、

浜辺が光っているような、あの静けさ。


すべてを出しきった、

愛しき仕事のあとの静かな幸福。


生徒たちは抱き合い、笑い、

理由もなく涙を流す人もいました。

先生はその光景を見つめながら思いました。


「これだ。 

これこそがフラメンコ。 

これこそが〈ラ・ベルダ〉だ。」


真実は踊るものではなく、

生きるもの。


その夜、みんながそれを生きていました。

仮面も恐れもなく、

心をひらいて――。


先生はひとり、

静かなスタジオに少しだけ残りました。

空気の中には、まだ手拍子の余韻と

花の香り、そして努力の匂いがありました。


目を閉じて、微笑みました。


きっとそれぞれの心の奥に、

あの瞬間が残っている。

すべてがコンパスで、

光で、

身体で、

そして感謝で満たされた、あの一瞬が。


そして灯りを消しながら、

そっとつぶやきました。


「もし迷うことがあったら、 

この夜を思い出してほしい。 

この夜――知らぬ間に、 

みんなが“ドゥエンデ”だった。」


—ベニ先生より 🐾

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